Project of Apostolic Life - Regulations

使徒的生活のプロジェクト

会憲


まえがき

 キリスト者には、洗礼に根ざす信仰に生きるために人それぞれに異なる道が開かれている。ある人々は聖霊につき動かされ、ドン・ボスコの姿に惹かれ、社会にあって「ドン・ボスコと共に働く」という理想を実現し、聖フランシスコ・サレジオ会と共通のカリスマを生きるよう招かれている。

 ドン・ボスコは当初から、自分と共に働く人々の会を作ることを考えていた。そして青少年、特に貧しく世間から見捨てられた青少年を救うというドン・ボスコ自身の使命に「協働する」ようにと、信徒と教区の聖職者とを招いた。一八七六年、自ら著し、後に教会が認可した「Regolamento dei Cooperatori Salesiani(サレジオ協力者会会則)」によって、ドン・ボスコは「生活のプロジェクト」を明確に打ち出した。現在、会員は「サレジアニ・コオペラトーリ*1会員」として全世界で活動している。

 本書は会員の「使徒的生活のプロジェクト」を示すものである。今日の教会と世界のニーズに応えて聖性に向かう確かな道を提示する。サレジアニ・コオペラトーリ会員は、これを実現するために、父なる神の忠実さに信頼を置く。

【訳注*1 会の名称:二〇〇七年の改訂時に、Cooperatori Salesiani から Salesiani Cooperatoriと改称された。日本語への翻訳にあたり、従来の「サレジオ協力者会」をイタリア語の読み方の片かな表示「サレジアニ・コオペラトーリ」とすることとした。】


第一章 教会と社会における サレジアニ・コオペラトーリ会員

第一条 創立者 神から遣わされた人

 「人間社会の中で最も繊細で最も貴重な層」を構成する青少年の救いに貢献するために、聖霊は聖マリアの、母としてのとりなしによって聖ヨハネ・ボスコを呼ばれた。聖ヨハネ・ボスコは、一八五九年に聖フランシスコ・サレジオ会を創立し、一八七二年には聖マリア・ドメニカ・マザレロと共にキリスト者の扶けなる聖マリアの娘たちの会(本書では「扶助者聖母会*2」という)を創立した。そして一八七六年に正式にサレジアニ・コオペラトーリの会を創立することによって、サレジオのカリスマの使徒的活力を拡大した。この会はサレジオ家族の第三の枝であり、聖ヨハネ・ボスコのサレジオ会もしくはサレジオ修道会とも称される、聖フランシスコ・サレジオ会(本書では「サレジオ会」という)と、密接なつながりを持っている。

 聖霊は、全面的に献身する父そして教師の心を聖ヨハネ・ボスコに授け、善き牧者の愛に基づく教育法の発想をお与えになった。

【訳注*2 扶助者聖母会:サレジアン・シスターズ」の正式名称。】


第二条 サレジアニ・コオペラトーリ会員:教会における特定の召命

 サレジアニ・コオペラトーリ会員として誓約するということは、サレジオ的召命に応えていくことである。即ち、福音を生きまた教会の使命に参与するための特別な道を歩むことである。それは賜物であると共に自由な選択であり会員の生き方に特質を与えるものである。

 カトリック信者であれば、その文化や社会環境のいかんを問わず会員の道を選ぶことができる。この道を選んだ人は、日々の生活の全てにわたって関与するような特別な信仰生活のあり方に招かれていると自覚する。

それは次の二つの姿勢によって特徴づけられる。

) 神が父であり救いをもたらす愛であることを感じる。

父のひとり子御父の完全な使徒であるイエス・キリストに出会う。

この世の神の民に息を吹き込む源である聖霊との親しさのうちに生きる。

) ドン・ボスコの、青少年と庶民の救いに貢献するという具体的な使命に招かれ遣わされていることを自覚する。


第三条 サレジアニ・コオペラトーリ会員 社会の中のサレジアン*3

 サレジアニ・コオペラトーリ会員は自身が置かれている社会の現実の中で信仰を生き抜く。ドン・ボスコの使徒的プロジェクトに導かれながらサレジオ家族の他のメンバーたちとの深い交わりのうちにあることを自覚する。兄弟的・連帯的に青少年と庶民に対する同じ使命に従事する。教会と社会の善のためにそれぞれの置かれた状況や具体的な可能性に応じて働く。

【訳注*3 サレジアン:サレジオ家族のメンバー。また、サレジオのカリスマをもって活動する人々。】


第四条 一つの召命 それを生きる二つの道

 ドン・ボスコはサレジアニ・コオペラトーリを信徒と教区聖職者とに開かれた組織として考えた。

 信徒であるサレジアニ・コオペラトーリ会員は、日常の生活と仕事の中で会員としての誓約とサレジオ精神を生き、社会に生きる信徒としての感性と特性をもってその価値を拡める。

 教区司教・司祭・助祭であるサレジアニ・コオペラトーリ会員は、ドン・ボスコによって示された卓越した司祭生活を模範として自らの役務を生きる。司牧上の選択においては青少年と庶民環境への献身を優先させる。


第五条 サレジオ家族の中の本会

 サレジアニ・コオペラトーリはサレジオ家族の一員である。サレジオ会、扶助者聖母会、及び公式に認可された他のグループと共に、サレジアニ・コオペラトーリ会員は家族共通のサレジオ的召命を担う者であり、教会と社会においてドン・ボスコのプロジェクトを活力あるものとする共同の責任を負っている。

 本会はサレジオ家族のそれぞれのグループに固有のアイデンティティーと自立性を尊重しつつ、社会の只中に生きる者としての固有の価値をサレジオ家族にもたらす。会員は創立者の意思によってサレジオ家族の中で固有の役割を担うサレジオ会との特別な交わりの関係の中で生きる。


第六条 教会の中の本会

 サレジアニ・コオペラトーリは公式のキリスト信徒の会として聖座より認可された会であり、サレジオ会の霊的遺産を共有するものである。

  会員はドン・ボスコの後継者であるサレジオ会総長の権威の下、司牧者への忠実の精神のうちに教会のその他の団体と連携し、教会の名による使命遂行のために積極的に協働する。

 会員は教皇に対しその子としての敬愛と忠誠を示す。

 サレジアニ・コオペラトーリは教会法上公的な性格を持つ。本会はローマにその本部を置く。


第二章 サレジアニ・コオペラトーリ会員の使徒職

第七条 福音的至福の証し

 サレジアニ・コオペラトーリ会員のライフスタイルは至福の精神に特徴づけられ、文化と社会生活の福音化に取り組むものである。

そのため次のことを生活の信条として証しする。

・霊性を常に優先させること。苦難と非暴力が実り豊かであることの証しのために平和とゆるしのパン種となる。

・神の計画に従順であることの自由。人間社会がもつ価値と自立性を尊重しつつ特に人々への奉仕に役立て方向づけること。

・福音的清貧。委ねられた資産を管理するに当たって共通善の視点で簡素さと共有を基準とすること。

・福音的貞潔の視点に立ち、繊細な心遣いのうちに結婚あるいは独身の貞潔な生活を生きる、愛に基づいた誠実さと喜びに満ちた性。


第八条 使徒職

 サレジアニ・コオペラトーリ会員は第一に日常の務めを通して使徒職を果たす。世の人々に仕えるべく父なる神から遣わされた完全な人であるイエス・キリストに従う。そのため会員は、神と隣人への愛という福音的理想を日常の生活において実践することに努める。

 会員はサレジオ精神に活気づけられどこにいても青少年に優先的に注意を払う。特に最も貧しい青少年、何らかの社会的な排除・搾取や暴力などの犠牲となっている青少年や職業の世界に入る青少年、そして特別な召命のしるしの見られる青少年に注意を払う。

  1. 会員は社会と教会の基礎的な核としての家庭の価値を養い高め擁護し、「家の中の教会」として家庭を築くことに力を注ぐ。既婚の会員は結婚を通して配偶者としてまた親としての使命を生きる。即ち「創造主である神の愛の協力者」、また「子どもたちの最初で主たる教育者」として、予防教育法の真髄であるボンタ(慈愛)に基づく教育法を実践する。

  2. 会員は教会の社会教説*4を実際の場に適用し広報メディアに注意を向け、教育の手段としてその正しい活用方法を推進する。

【訳注*4 社会教説(Dottrina Sociale della Chiesa):社会問題に関する教会の教え。】

 会員は教会の宣教活動を支援し、諸文化間の対話への開かれた姿勢により世界的視野に立つ教育を助成する。


第九条 キリスト者教育の役割

 サレジアニ・コオペラトーリ会員はドン・ボスコのようにあらゆる場を教育と福音化の場としてとらえ、「誠実な社会人、善良なキリスト者、そしていつの日か天国の幸せな住人となる人」を養成するための役割に取り組む。そして常に人間としてキリスト者としての成熟に向かって歩んでいることを確信する。

 会員は、真理、自由、正義、共通善、奉仕などの真の価値を青少年と共有する。

 会員は青少年がキリストのうちに人生の意義を見出し新しい人として成長するため、信仰と秘跡を通して復活したキリストに出会うよう教育する。

 会員は生活のプロジェクトを実行するよう青少年を援け、彼らが教会と社会に於いてキリスト者としてまたサレジアンとしての証しを生きるよう勇気づける。


第十条 ボンタ (慈愛)の教育法

 サレジアニ・コオペラトーリ会員は教育的役割として次のことを行う。

ドン・ボスコの「予防教育法」を適用する。この教育法は「特に道理、信仰そしてボンタ (慈愛)に基づくもの」であり、絶え間ない対話によって、押し付けるのではなく納得させ、懲らしめるのではなく予め気づかせることを心がけるものである。

家族的環境を創り出す。そこでは、活性化、個人的付き添い、グループ体験を通して神の存在に気づくことを援ける。

善を促し、命への愛、責任感、連帯、分かち合い、交わりを育む。

一人ひとりの内的な資質に訴えかけ目に見えない神の恵みの働きを信じる。会員は教育の価値と信仰の体験を確信して、一人ひとりの青少年を現実をふまえた楽観主義の目で見つめる。会員の青少年との関係は、成熟した受け入れる愛に基づく。


第十一条 本会の一般的な活動

 サレジアニ・コオペラトーリ会員の使徒職は様々である。その中で自身の仕事や専門的素養に沿って、下記のことを優先的に実行する。

・要理教育(カテケージス)とキリスト教的養成

・青少年と家族を対象としたグループや運動の活性化

・教育の場及び学校との連携

・貧困者のための社会奉仕

・広報活動

・召命のための司牧活動への協力

・一般的な宣教活動

・キリスト教諸宗派のエキュメニズムと諸宗教との対話への協力

・社会的・政治的活動における愛の奉仕

・本会の発展のための活動


第十二条 使徒的活動の方法

  1. サレジアニ・コオペラトーリ会員は、祈りによって、他の人々を巻き込むことによって、物質的な手段をもって、本会の使徒職を支える。

 会員の活動の大部分は、市民的、文化的、社会・経済的、政治的な組織や場、教会やサレジオ会の場など、信徒としての働きに最も意義の期待される場で協働と連携の精神のうちに行われる。

 また、本会が独自に行う事業や地域固有のニーズに応える取り組みにおいて使徒職を遂行することもできる。


第三章 交わりと連携におけるサレジアニ・コオペラトーリ会員

第十三条 ドン・ボスコにおける兄弟姉妹

 サレジアニ・コオペラトーリ会員は共通の召命を持ち、同じ会に所属することによって霊的な兄弟姉妹となる。会員は「心と魂において一つ」となり、ドン・ボスコの精神に見られる特徴的な絆に結ばれ兄弟的な交わりを生きる。

 会員は互いに知り合い、体験と使徒的計画とを分かち合い、共に成長するため、本会の「家族的生活」に喜びをもって参加する。


第十四条 使命における共同責任

 サレジアニ・コオペラトーリ会員は共通の使命への責任を自覚し、各々の可能性と能力に応じてその使命を果たす。会員一人ひとりは率先して取り組む精神をもって、さまざまな活動の計画立案、実行、評価、また責任者の選出に参加しなければならない。そして責任ある立場に就くことを要請されたならば、委ねられた任務に誠実にかつ奉仕の精神をもって取り組む。

 会員は本会が使命を実現できるよう各自が責任をもって会の財政的自立を支える。


第十五条 サレジオ家族の一員としての生活への参加

 サレジアニ・コオペラトーリ会員は、互いに知り合い、情報を分かち合い、養成において互いに霊的に援け合い、共通の使徒職に携わることによって、サレジオ家族の他のグループやメンバーとの兄弟的交わりを培う。サレジオ家族の様々なレベルの評議会や他の組織を通して、サレジオの使命が教会及び社会に、より豊かな奉仕を提供できるように共通の探求や取り組みを促進する。


第十六条 総長の役務

 サレジオ会総長はドン・ボスコの後継者である。創立者ドン・ボスコが明白に意思表示をしているとおり、総長はサレジアニ・コオペラトーリの長上であり会の最高統治者の役割を果たす。総長は創立者の理念に対する本会の忠実を保証し会の発展を促進する。

 副総長や他の総長代理者を通してもまた発揮される総長の役務は、特に本会全体を活性化し養成上、使徒職上の種々の取り組みを調整するために、通常、世界評議会*5を活用する。

 本会の会員は総長に対する誠実な敬愛の情を育みその指針に忠実である。

【訳注*5 世界評議会:世界レベルの評議会をいう。第三十八条参照。】


第十七条 サレジオ会及び扶助者聖母会との特別な絆

 サレジアニ・コオペラトーリは、サレジオ会と「確固たる永続的な一致の絆」で結びつけられており、また扶助者聖母会と特別なカリスマの絆によって結ばれている。

 サレジオ会と扶助者聖母会はドン・ボスコの望みに従い、管区及び支部の両レベルにおいて、サレジアニ・コオペラトーリを「支え、成長させ」、会員の養成に貢献し、会の使徒的生活のプロジェクトを知らしめると共に促進する責任を負うことを自覚する。


第十八条 サレジオ家族の他のグループとのつながり

 サレジアニ・コオペラトーリ会員はサレジオ家族に属する全てのグループに親近感を抱いている。会員は各グループ特に修道会以外のグループに対して、そのアイデンティティーと自立性を尊重しつつあらゆる協力を惜しまず促進する。


第四章 サレジアニ・コオペラトーリのサレジオ精神


第十九条 貴重な遺産

 ドン・ボスコは聖霊に導かれ独自の生活と行動のスタイルを体得し、それをサレジオ家族のメンバーに「サレジオ精神」として手渡した。

サレジオ精神はキリストご自身の心に根差す典型的な福音的体験である。これは教会と社会においてこの精神を生きる人の存在と行動を活性化する。そして使徒職への取り組みと祈りによって養われ、会員一人ひとりの生活全体を特徴づけ、愛の証しとするものである。それは「修養的な道」を必要とするが、ドン・ボスコの求めた「労働と節制」を反映して喜びの笑顔によって明るく照らし出される。


第二十条 忠実な信仰の体験

 サレジアニ・コオペラトーリ会員はサレジオ精神を主から教会に与えられた賜物として喜んで受け入れ、信徒あるいは教区聖職者としてのそれぞれの環境に応じて実りあるものとする。会員一人ひとりはドン・ボスコの霊的体験にあずかり、ヴァルドッコのオラトリオで少年たちと共に生活した最初の会員と同じ特別な熱烈さをもってこれを生き、キリストに従う生き方(Sequela Christi)を生き抜く。

 会員は無原罪の扶助者聖マリアの中に自らの召命の最も深い要素を見い出す。それは神の救いの計画の実現における、の「神の協力者」となることである。

会員はキリスト者の扶け善き牧者の母である聖マリアに、青少年の救いに実際に関わるために必要な力を与えて下さるようにと祈り求める。

 会員は教会の交わりの実際の体験を培う。


第二十一条 中心である使徒的愛

 サレジオ精神の核心は使徒的で司牧的な愛である。それは父のいつくしみ、キリストの救いの愛であり、聖霊の力を青少年の中に存在させるものとなる。ドン・ボスコはこのことを「Da mihi animas, cetera tolle.(我に魂を与え、他のものを取り去りたまえ)」という標語で表した。そしてドン・ボスコはキリスト者のヒューマニズム、使徒職と慈愛の模範としてサレジオの聖フランシスコを保護者に選び、「サレジオ」という名称のうちにこの愛を示した。

 サレジアニ・コオペラトーリ会員にとって、この愛は神からの賜物であり会員を神と青少年とに結びつけるものである。それは聖マリアの母としてのとりなしによって吹き込まれ、会員の日々の証しにおいて援けとなる。


第二十二条 社会の中のサレジオ的存在

 サレジアニ・コオペラトーリ会員は、自分たちが生きその中で光とパン種になるよう召されているこの世との「深い連帯」を自覚する。会員は一人ひとりの内的資質を信じ、自分たちの生きる社会の文化の価値を人々と共有し、文化がキリスト教的ヒューマニズムに導かれるように取り組む。会員はキリスト者としての感性によって新しいものを受け入れ、特に青少年の言葉に耳を傾けながら、「全ての善いもの」を生活の中に取り込む。

 会員は多くの挑戦や困難に直面しつつその真っ只中で生きるように呼ばれ、建設的な姿勢で臨む。会員は社会の中に連帯と受容のキリスト教文化を拡めることに取り組む。


第二十三条 行動のスタイル

 サレジアニ・コオペラトーリ会員は仕事と日常生活を通して自らを聖化し、その行動は常に神との一致に根差している。会員は「善きキリスト者、誠実な市民」として生活する。いつでも必要に応える心構えを持ち、利他的で、惜しみなく無償で行動することの価値を信じている。


第二十四条 人間関係のスタイル

 サレジアニ・コオペラトーリ会員は人々との関係においてドン・ボスコが求めた慈愛を実践する。会員は開かれた温かな心で喜びにあふれ、いつでも自分から先に一歩を踏み出す心構えを持ち、優しさ、敬意、忍耐をもって相手を受け入れる。飾らない、愛情に満ちた家庭的雰囲気を創り出しながら、信頼と友情の関係をうち立てる。会員は平和のために働き、対話のうちに相互理解と和合を求める。


第二十五条 祈りのスタイル

 サレジアニ・コオペラトーリ会員は、イエス・キリストとの一致がなければ何一つなしえないことを確信している。会員は日々自分たちを照らし力を与えて下さる聖霊に祈る。会員の祈りは単純素朴で信頼に満ち喜びと創造性にあふれている。使徒的熱意の浸透した、生活に則した祈りである。会員は祈りの生活を豊かに育むため、教会、本会及びサレジオ家族が提供する霊的な源泉を頼みとする。典礼に積極的に参加し、会員の霊的生活をより豊かなものとすることのできる様々な信心に価値を見出す。

 会員は秘跡の体験を通して信仰を強める。聖体は会員の使徒的愛を養う。ゆるしの秘跡のうちに御父のいつくしみと出会う。御父は会員の人生にダイナミックで絶え間のない回心への望みを刻み、ゆるす心の成長を援けてくださる。

 会員は本会によって計画される霊性のためのプログラムによって内的・使徒的生活を堅固にする。


第二十六条 聖母マリア、サレジオ家族の聖人との交わり

 サレジアニ・コオペラトーリ会員はドン・ボスコのように、キリスト者の扶け聖マリア教会と人類の母聖マリアに対して子としての愛を育む。聖母マリアは救い主の使命に協力し今日もキリスト者の母、扶助者であり続けている。聖母マリアはサレジオ家族にとって特別な導き手である。ドン・ボスコは、サレジアニ・コオペラトーリ会員が使命を果たすにあたって保護と示唆を受けることができるように、本会を聖母マリアに委ねた。

 会員は世界に広がる教会の保護者聖ヨゼフに特別な親愛を寄せ依り頼む。会員は青少年と全サレジオ家族の「父であり、教師である」聖ヨハネ・ボスコに信頼をこめてとりなしを願う。

 会員は使徒的生活の模範の中でも特に、サレジオの聖フランシスコ、聖マリア・ドメニカ・マザレロ、アレクサンドリーナ・マリア・ダ・コスタ、マンマ・マルゲリータ、そしてその他のサレジオ家族の聖人、福者、尊者を崇敬する。


第五章 サレジアニ・コオペラトーリ会員の帰属意識と養成

第二十七条 入会

 サレジアニ・コオペラトーリ会員となるためには、聖霊に導かれ、養成の責任者に伴われ、本人の自由意志によって、段階的な過程を踏んだ充分な動機に基づき、熟慮された選択が必要である。入会を望む志願者は適切な準備のプログラムを受講する。

 サレジオのカリスマにおいて充分な成熟レベルに達したと支部評議会が認めた時、志願者は入会の願書を提出する。但し、志願者はこの時成年に達していなければならない。

 志願者は、「使徒的生活のプロジェクトに沿って洗礼の約束を生きる意志」を表明する個人的な誓約をもって、本会会員となる。


第二十八条 帰属意識

 サレジアニ・コオペラトーリ会員は、本会に所属することが信仰と教会的交わりの恵まれた体験であることを認識している。会に所属することはまた、その会員自身の使徒的召命を維持するためにそれが不可欠な要素であることを意味する。

 会員は会に所属したことにより、会員としての具体的なしるしと活動への積極的な参加が求められる。


第二十九条 養成における責任とイニシアティブ

 サレジアニ・コオペラトーリ会員の、人間として、キリスト者として、サレジアンとして、また社会人としての養成の第一の責任を負うのは、その会員自身である。

 本会は、ふさわしい経験を積んだ会員、デレゲート、その他のサレジオ家族のメンバーの働きを通じて、個人及びグループの養成を促進し維持する。


第三十条 責務への忠実さ

 サレジアニ・コオペラトーリ会員であることは生涯にわたる召命である。会員は深い帰属意識をもって日々証しを行い、使徒職を果たし、さまざまな奉仕を生きる。会員は、会の中でも、また他のグループや教会関係の組織が推進する活動でも、開かれた心で取り組みながらサレジオ的カリスマを生きるように神に招かれている。会員の忠実さは本会及びサレジオ家族のメンバーの友情と連帯によって支えられている。

 本会への帰属の価値、そして本会を通じてのサレジオ家族への帰属の価値を強めるために、会員は会則に示される適切な方法によって「誓約」で誓った会員としての責務を確認する。


第三十一条 退会

 個人の意思により退会を望むサレジアニ・コオペラトーリ会員は、支部評議会に対して書面によってその理由と決意を表明する。支部評議会はその写しを管区評議会に提出する。

 重大な事情のために会員を退会させる決定は、理由を添えた支部評議会の申し出に基づき管区評議会が下す。当人の行動が会憲・会則に記された基本的義務に合致しないと確認された後、退会の決定は愛徳の精神と明確さをもって書面で当人に伝えられなければならない。


第三十二条 誓約とその意味

 誓約の意味と目的は、使徒的生活のプロジェクトに則して洗礼の道を生き抜くことの意志を表すことである。この誓約は、社会の中でのサレジオ的召命の使徒的な表現としてドン・ボスコ自身によって提案されたものである。

 誓約の言葉

「御父よあなたを礼拝します。あなたは善い方で私たち一人ひとりを愛してくださいます。

私を創造しあがなってくださったことを感謝します。

あなたの教会に属するものとして私を呼んでくださったことを感謝します。


ドン・ボスコの使徒的家族が教会の中で知られるようにしてくださったことを感謝します。

この家族は青少年そして庶民への奉仕を通してあなたのために生きています。

あなたの慈しみ深い愛に魅せられ、私は善を行うことによってあなたの愛にお応えしたいと思います。


そのため準備課程を終えた今、

私はサレジアニ・コオペラトーリの福音的計画を生き抜くことを誓います。


すなわち、

カトリック教会においてキリストの忠実な弟子であること、

あなたの御国で、特に青少年の向上と救いのために働くこと、

サレジオ精神を深め証しすること、

サレジオ家族の交わりの中で地域教会のあらゆる使徒的活動に協力することを約束します。


御父よ、

私が人生においてこの決意に忠実でいられるようあなたの霊の力をお与え下さい。

教会の母、扶助者聖マリアが、私を扶け導いてくださいますように。

アーメン」


(この誓約文は、主旨を大切に保ちながら、種々の事情に適応させて変えてもよい。

誓約更新のときには、「準備過程を終えた」を省くと共に、「生き抜くことを誓います。」と言う代わりに「生き抜く誓約を更新します。」と言う。)


第六章 サレジアニ・コオペラトーリの組織

第三十三条 本会を組織する意義

 サレジアニ・コオペラトーリ会員は、自らの召命を生きるために適切な組織構造の必要性を認識する。ドン・ボスコの導きによって一致の精神のうちに使徒的生活のプロジェクトを生きるため、会員は本会に組織される。


第三十四条 柔軟な組織

 本会の組織は創立者の意志に沿い、支部、管区、そして世界の三つのレベルに基づいた機能的で柔軟な構造をもつ。この構造を通して、それぞれの地域での活動、また交わりと使命の普遍性への開かれた姿勢を効果的なものとすることを目指す。


第三十五条 支部、管区、世界の各レベルでの組織運営と活性化

 本会の組織運営と活性化活動は総長の権限に属し、通常は副総長またはその代理者が代行し、評議会に委託する。評議会にはサレジオ会管区長と扶助者聖母会管区長によって指名されるそれぞれの会の修道者が含まれる。本会の法的代表者は、それぞれの評議会のコーディネーターに委任される。


第三十六条 支部レベル

 本会の実際の活動の基礎的中核は支部である。通常は同じ地域で活動するサレジアニ・コオペラトーリ会員が集まって支部を形成する。支部はサレジオ会または扶助者聖母会のいずれかが運営する事業の下で設立されることが望ましい。

  1. 支部は支部評議会によって合議的に運営される。支部評議会は支部コーディネーターを評議員の中から選出する。支部にはサレジオ会または扶助者聖母会の支部デレゲートが、それぞれの管区長によって任命される。

 他の信条、宗旨、文化を持つ人々でも、サレジオのカリスマに賛同する善意の人であれば、支部の取り組みに参加し共にドン・ボスコの友人として協働することができる。


第三十七条 管区レベル

 支部は、世界評議会の推奨に基づいて総長によって立てられた管区に組織される。

 本会管区は、サレジオ会及び扶助者聖母会との特別な絆を考慮し、それぞれの修道会の管区の現状に則したものとする。

 各管区は、会則に定められる手順に従い支部評議会の選挙によって管区評議会を設置する。

 管区評議会は合議的に運営され、評議員の中から管区コーディネーターを選出する。管区評議会にはサレジオ会の管区デレゲート及び扶助者聖母会の管区デレゲートが、それぞれの管区長によって任命される。

 本会を活性化するために、世界評議会の理解の下に総長の決断により、言語、文化、または地理的同一性を考慮し、それぞれの運営の自立性を尊重しつつ、複数の管区が「地域」として組織される。地域に属する諸管区は、その地域を代表する世界評議員を選出する。地域のサレジオ会諸管区長及び扶助者聖母会諸管区長は合議の上、サレジオ会の地域デレゲートと扶助者聖母会の地域デレゲートを任命する。


第三十八条 世界レベル

  1. 世界評議会は、それぞれの地域から選出される世界評議員と総本部事務局*6とによって構成される。総本部事務局は、総長により直接任命される世界コーディネーター、世界評議会により世界評議員の無記名の投票によって選出される世界財務と世界書記、総長によって任命されるサレジオ会の世界デレゲート、扶助者聖母会総長の推薦にもとづきサレジオ会総長によって任命される扶助者聖母会の世界デレゲートによって構成される。

【訳注*6 総本部事務局:(伊:SEM=Segreteria Esecutiva Mondiale, 英:WES=World Executive Secretariate)】

 世界評議会のメンバーの任期は六年とする。

 世界評議会の議決事項は総長の承認を得てはじめて有効となる。


第三十九条 本会の資産管理

 サレジアニ・コオペラトーリは公的な宗教法人である限り、法律に基づいて物的財の取得・所有・管理・譲渡の資格を有する。本会が所有する財は教会財産である。

 総長は世界評議会と共に本会の世界規模の財を管理するが、聖座の介入を必要としない限り支部及び管区の活動のための財務管理行為と譲渡を行う許可を、支部評議会と管区評議会に与える権限を有する。

 各評議会は互選によって選ばれた財務管理者を通して本会の財の管理を行う。財務管理者は、より上位レベルの評議会に報告するための資産管理報告書を作成する。


第四十条 おわりに

 サレジアニ・コオペラトーリは現行の会憲を基に運営される。その他の規範は世界レベルの会則または種々のレベルの指導書に示される。

 「会憲」はサレジアニ・コオペラトーリの召命のアイデンティティー、その精神、使命、そして組織構造の原則を定めるものである。

 「会則」は本会の活動、方法、構造、組織について特定し規定する具体的な項目を記している。会則は会憲の原理原則に従い、会の日々の生活の中でそれを具体的に適用できるようにするものである。

 「指導書」は夫々のレベルの現状や特定の活動において具体的に機能するよう、会憲・会則を適用させるために定められるものである。指導書はそれぞれの評議会によって承認され、その直接の上位レベルの評議会によって認可を受ける。上位レベルの評議会は、指導書が会憲と会則に適合するものであることを保証しなければならない。

 現行の会憲は、本会の長上である総長、世界評議会、または管区評議会の提案を受けて修正することができる。いずれの場合も修正提案の扱いを判断するのは会の長上である。提案採用にあたり適宜提案が公布される。

修正提案には、修正の正当性を示す理由の明確で詳細な説明と、修正の具体的目的、修正によってどのような原則が打ち出されるか、について示されなければならない。

修正の手続きは総長の指導の下世界評議会によって決定される。

修正されるためには、世界会議参加者の絶対多数による承認、次いで本会の長上による承認、そして最終的に聖座による承認が必要である。


むすび

第四十一条 聖性への道

 サレジアニ・コオペラトーリ会員は、本会憲と会則に記された福音的な道を分かち合うことを選択する。会員は聖性へと導くこの道に責任をもって取り組む。

 青少年と庶民に善を為しながら「Da mihi animas(我に霊魂を与えたまえ)」の精神のうちに働く全ての会員に、主が豊かな恵みを注ぎ共に歩んでくださいますように。


(以上)

サレジアニ・コオペラトーリ「使徒的生活のプロジェクト 会憲」 20071224日版                      1111